マーケティング職の現場
『傾聴』する意味を知り 『興味』を持ち、人と関わる力を鍛える

マーケティング職に必要なコンピテンシー
解決意向 疑う力 興味 共感・傾聴力 柔軟性

キユーピー株式会社
広域営業本部 グループ流通 開発企画課
(兼)家庭用本部 営業企画部 業態対応チーム
近藤大作さん

大事にしたのは現場感 新商品開発で2年間続けた事

――近藤さんは広域営業本部と家庭用本部を兼任させていますが、実際はどのようなお仕事をされているんですか?
「広域営業本部では、全国に店舗を展開する広域企業を担当する営業メンバーへのマーケティングサポートを行なっております。営業は体験としてマーケティングを理解していますが、そのプロセスを勉強する機会は少ないので、定期的に勉強会を開いたりしています。家庭用本部では、CVS業態に特化した商品開発、販促プロモーションを行なっております。通常は、商品開発、販促、営業と分かれていますが、それではCVS業態の場合、先方の素早い対応に対応できない可能性があるので、すべてのフローをひとりで行う部署として設置され、私が最初に着任しました。商品も作りながら、マーケティングの仕組みも作る、そういった業務を行なっています」

――開発された商品にはどのようなものがありますか?
「2015年に展開した『素材が恋した 怪味ソース※』ですね。“怪味(かいみ)”とは中国・四川省発の調味料で、辛さと複雑な味わいが特徴です。これをマイルドにアレンジしたものが“怪味ソース”。発売の半年ほど前から唐揚げ専門店などの外食向けに怪味ソースを展開し、他の食品メーカーと一緒に『怪味研究会』を立ち上げるなど、“怪味”についてさまざまな話題作りを行ったうえで、CVS向けに『素材が恋した 怪味ソース』を発売しました。※現在は販売終了
着任当時は『コンビニ業態で何かやらないといけない、でも何をしたらいいかわからない』という状況でした。最初の2年間は毎日3時間くらいコンビニにいて、行動観察をしていました。ちょっと怪しい人だと思われていたんじゃないでしょうか(笑)。お客様がどんな行動をして何を買うかを見ているうちに、買い物だけでなく、目的もなく回遊しながら、新しいものや情報を取りにくる『宝探し』をしている方がいると気づいたんです。そこで、『コンビニで買ってもらうにはハードルが高い調味料も、話題性があれば買ってくれるんじゃないか』と考え、思いついたのが“怪味ソース”でした」

すべての入り口は『興味』。だからこそ、
自分に関係ない事には、時間を惜しまず参加する。

――近藤さんは仕事をする上で、何を大切にしていますか?
「生のお客様の声をきく、特に『傾聴』は大事にしています。なにも大掛かりにアンケートを取るなどしなくても、知り合いや、家族、広く言えば社員もお客様ですから、まずは身近な人たちから意見を聞く。何か新しいコンセプトや可能性がある仮説を立てたら、そこからスタートしています」

――マーケティング・企画職を目指すには、ほかにどのようなコンピテンシーが必要でしょうか?
「まずは『興味』が入り口になります。私は『自分に関係ない事には時間を惜しまず参加しよう』と、学生時代から意識しています。その場で実にならなくても、何かアクションを起こす時に、関係のない場で見聞きした事や知り合った人が繋がっていく事って多いんです。いろんなところに〈点〉を持っておくと、それがいつしか〈線〉として繋がる。『怪味ソース』の企画も、仙台で営業をしていた時に知り合った中華料理人が、東京へ移動する餞別としてくれた調味料が元なんですよ」

――人との繋がりから生まれたアイデアなんですね。『興味』を持つ力はどうすれば鍛えられるのでしょう?
「自分に必要ない事にも関心を持ってみてはどうでしょうか。例えば電車の中吊り広告も、なぜあの色、形になったのか?と考えてみる。色彩検定の資格までとる必要はないですが、どんな色がどんな印象を与えるかを知っておくだけでも違うと思います。あと、私が最近気にかけているのはキャッチコピー。心に残るものとそうでないものの差は何なのかと考えたり、自分の提案書すべてにキャッチコピーをつけるようにしたりしています。そうするとストーリーも自ずと出来上がって行くので面白いんですよ。そういった事を意識的にやってみてもいいですね」

300%のパフォーマンスを生み出す術は
自ら築いた“人との繋がり”にある

――『疑う力』も必要ですか?
「これだけものが溢れた飽和状態の中で商品開発をするとなると、世の中にないものを作るのは不可能だと思います。さらに、ヒット商品を生み出そうとなると、どこかでこれまでの常識や何かを疑わないといけない。ですが、その『疑う力』や『解決意向』は社会人になってから身につけたら良いのかなと個人的には思います。社会に入ると、ほとんどが年上の方ばかりです。上司や先輩に知識や経験を教えてもらうには、やはり『素直』であるのも大事。自分の意見を持ちながらも、興味関心を持って人の話を聞くには柔軟さも必要です」
――コミュニケーション力も鍛えておかないと?
「学生の頃から意識しておいたほうがいいと思います。いろんな本もありますが、コミュニケーション力は、学問ではなく経験で鍛えられるものですから。実は、私ももともとコミュニケーション能力が高くなくて、隅っこで大人しく生活していたいタイプだったんです。それが2011年の震災をきっかけに、人との付き合いの大切さが分かって変わりました。やはり、ひとりで出来る事は限られている。自分が30%のパフォーマンスしか出来なくても、いろんな人の力を借りればそれが300%になるもしれない。コミュニケーション力は磨いておいた方が良いですね」

面白さと難しさが共存するマーケティング
それを楽しめるかは自分次第

――学生の皆さんが明日から出来る事というと?
「自分とは絶対に考え方が合わない人と話す事。それは私も意識していて、年に1回はそんな犬猿の仲とも言える人と飲みに行くんです。相手もよく来てくれますよね(笑)。ただ、犬猿の仲という事はお互い何かしら興味があるわけです。学生の時は友達のグループもあったりしますが、自分の枠を越えるためにも違うグループに飛び込むのは面白いんじゃないでしょうか」

――最後に、就活に挑む学生たちにメッセージをください。
「学生さんから『マーケティングって楽しいですか?』と相談を受けたことがありますが、楽しめるかどうかは自分次第だと思います。特に、マーケティングは携わる範囲が幅広い。商品を作るところから、営業して発売、発売後の検証まで、いろいろな部署に関われる面白さがある。ただ、幅広い分すべてにおいてある程度の知識・知見がないと関われない難しさもあります。面白さと難しさ、両方を楽しめるかも自分次第です。自分の強みを把握して、それをどう生かしたら楽しめるのか?学生の時から常に考えておくといいと思います。何事も楽しんだもの勝ちです(笑)。下を向いても何も生まれないですから」