起業家・経営者の現場
人生の時間軸を常に意識すること。
『個人的実行力』が、すべてを前進させる

起業家・経営者に必要なコンピテンシー
課題設定 個人的実行力 ビジョン 自己効力 情熱・宣教力

株式会社SQUEEZE
代表取締役社長
舘林 真一 さん

求めていたのは大きいインパクトを起こすこと
そのきっかけは身近なところにあった

――起業に至った経緯を教えてください。

「大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券のシンガポール支社を経て、世界最大の旅行メディアを運営するトリップアドバイザーに転職しました。もともとなんでも自分でやりたいタイプで、小さい頃は野球部でキャプテンもやっていましたが、組織を引っ張ることにこだわりはなかったんです。だけど、自分の思うところへ人を動かしてインパクトの大きいことをやりたい思いは小さい頃からあって、35〜40歳くらいで会社を起こせたら、くらいに思っていました」

――それがなぜ25歳で起業することに?

「SQUEEZEのビジネスモデルは民泊(ホームシェア)やホテル・旅館、簡易宿泊所向けのクラウドソーシングシステム提供や運営サポートなのですが、実は最初は身近なところからスタートしたんです。実家の北海道・旭川の両親が所有していたアパートに空室が出てきて、その頃AirbnbやHomeAwayをよく目にしていたので、その空室を旅行者に貸したらどうか?と提案しました。すると、旭山動物園に近いこともあって、賃貸で入らなかった物件で、家賃の3、4倍の宿泊料が入ってくるようになりました。その時に、これはビジネスになるな、と感じました。物件自体にすごくポテンシャルがあっても、オーナーさんはそれに気づいていなかったり、外国語の対応ができなかったりする。私の場合も、親は英語ができなかったので、私がシンガポールから、外国語の対応やクリーニング会社との連絡まで、完全リモートで代わりにやっていました」

――離れていても手配はできたんですね。

「そうですね。日本は空室問題が持ち上がる一方で、ホテル不足も深刻化している。そして、この実体験をビジネスモデルにできないかと考えたとき、シンガポールで大手ベンチャーキャピタルの投資家の方に声をかけていただいたんです。『年齢は関係ない。若い人は失敗を恐れずどんどん挑戦していくべきだ』と言ってくださって、私が考える事業にもとても共感していただきました。今でもメンターのような存在ですが、その方との出会いで自分の意識が大きく変わりました。2020年に東京オリンピックを控えて、外国人旅行者が増えるこのタイミングで、大きなビジネスをやってみようと帰国を決め、その1か月後には会社を退職し、東京に戻って起業していました。その後、事業のスタート共にその投資家の方にシードファンドとして1億円のご出資をいただくことができました。」

学生時代に出会ったビジネスパートナーの存在
人との繋がりの中で生きていると実感

――実際に起業してから難しさを感じたことは?

「全てが初体験のことばかりなので、最初は常に大変でした(苦笑)。まずは、起業家の先輩や、実際にこのビジネスで成功している人に会って、とにかく情報を集めることから始めました。一番苦労したのが、チーム作り。実績もなく誰も会社名を知らない中で、どうメンバーを増やしていくか。また、机上論だった事業モデルをどう実現していくか。会社を立ち上げて2、3ヶ月の25歳が物件のオーナーや不動産会社に会いに行き、物件の運用委託の交渉をする……お客様を見つけるのにも苦労しました」

――その大変だった時期を乗り越えられたのは?

「取締役の中川渉と一緒にスタートできたことがすごく大きかった。彼はもともと学生時代、日米学生会議で一緒だった仲間です。初めてのことをすべて一人でやるとなるとおそらく不安も感じたでしょうが、ビジネスパートナーがいるから、お互い尻を叩きあえた部分はあります。また、人との繋がりも大きいですね。Airbnbの日本支社が立ち上がったとき、そこで働いていたのがシンガポールの知り合いで、Airbnb社が、物件オーナーさん向けに行っていた説明会に参加させてもらったりとオーナーさんと出会う機会をいただきました。そこで出会った方が代行委託をしてくれて、最初のお客さんになりました。人とのつながりによって、最初のビジネスに繋がっていったという感覚です」

『実行力』は起業に必要最低限のコンピテンシー
0を1にすることに恐怖心を抱かないで

――起業家に必要なコンピテンシーというと?

「まずは『実行力』でしょう。『ビジョン』や『情熱』はみんなある程度持っているし、『課題設定』はどんな状況でも出来るはずです。ただ、自分で一歩を踏み出せる『実行力』があるかどうか。起業においては、最低限必要なコンピテンシーだと思います。0を1にすることに対して、リスクを考えたり、恐怖心を抱いたりするのではなく、マインドをポジティブに持てる人は強いと思います」

――ご自身もそういった資質を持っている自覚はありますか?

「そうですね。何に対しても、常に『やってみないとわからない』という感覚でいたいですし、『失敗から学ぶ』という感覚もある。結果的に恥ずかしい思いをして、ひとり落ち込むこともありますけど(笑)」

――その裏側には自信をもって進められる『自己効力』が必要では?

「全然自信がない時もありますよ。それに、『絶対に成功する』と思ったことしかやらなかったら幅が狭くなります。可能性が少しでも見えるのであれば99%失敗しそうでも、残りの1%に賭けてみる……私は自信より好奇心が強いのだと思います(笑)。私も、昔はこんな考え方じゃなかったんです。数ある「小さな思い切り」の経験が積み重なって出来るようになってきた。だから、学生たちも小さいところから、思い切ってリーダーになってみるとか、プレゼンで発表してみるとか、小さな一歩でも徐々に重ねていくことが、やりたいことの実現に繋がっていくんじゃないでしょうか」

――『ビジョン』は持っている人が多いというお話がありましたが、そのアイデアの種の探し方はあるでしょうか?

「たとえば、日常生活で、困ったことや腹が立ったことがあったら、それが機会だと思っています。そこには改善策や、よりよく出来る可能性がある。ビジネスチャンスは、変化を生めるところにあるんじゃないかな」

4年間で得られることの限界を決めない
常に焦りながら吸収し続けるべき

――起業家を目指す学生たちが、今日からできることはありますか?

「時間の意識を変えることです。起業して3年弱経ちますが、本当に時間が経つのは早い。30代、40代、50代と出来ることが変わっていく中で、時間の希少性をすごく感じています。大学は4年間勉強できる環境があり、学ぼうと思えば何でもできる。私は当時それを最大限生かしたいと思っていて、『この4年間に参加できるプログラムや海外研修、インターンシップをどう詰め込もうか?』と、いい意味で常に焦りながら考えていました。学生の間は先が長いから、あとでやればいいか、とか、来年やれるかな?という感覚で、どんどんやらなくなっていく。将来に対して、この4年間がどんな意味があるかを考えられれば、計画を詰めていけると思います。限られた期間で何ができるか?限界を考えず、執着心を持てるかどうかが鍵です」

――最後に学生にメッセージをください。
「起業はゴールではなく、ファーストステップ。起業したいから何かをやるのではなく、自分のやりたいことの過程に起業があるだけです。やりたいことが漠然としていたとしても、そこに向かって時間軸をしっかり持って、今、何をしておけばいいのかを常に意識する。それは決して無駄じゃないと思います。与えられている時間はみんな同じなので、毎日が勝負。競争もある中で、人よりいかに吸収するかは、一日24時間をどう使うか。それを常に考えておけば、4年間で相当成長できると思います!」