教職の現場 教師の“影響力”は、生徒の背中を押す。 それが子どもの未来を変え、世界をも変える(第2回)

教職に必要なコンピテンシー
個人的実行力、内的価値、影響力の行使、地球市民、誠実さ

広島女学院中学・高等学校 国語科・グローバル教育推進部
副主任
那須泰(なすやすし)さん

「気づき」を与えるための『課題設定』
子ども達の笑顔が、教師を動かす

「今のご時世、活字に慣れていない人も多く『論理的思考』がないので、感情的な部分に寄与しないものはなかなか受け入れられない傾向にあります。子ども達だけでなく世の中もそうです。たとえば一つのニュースに対して、それが一方的な意見なのかどうかが判断できない。答えがあることに飛びつく習慣ができているので。その思考は間違っているといっても、生徒自身が気づかなければ変わらない。気づかせるために、教師はどんな仕掛けをするか? そこで『課題設定』が重要になります。『創造性』もすごく大切」

――あらゆるコンピテンシーが必要なのですね。
「教師が総合力で接しないと子ども達は変わらないのです」

――どういったところに教職の楽しさを感じていますか?
「失敗の連続であっても、その中で生徒が変わる笑顔を見ると、楽しくてやめられなくなりますよ。そのサイクルを、教員なり、学校という組織が提供できるかどうかが鍵。学校づくりには『個人的実行力』も必要です。広島女学院には、経験の中であらゆるコンピテンシーを身につけた、ヒューマンスキルの高い先生方が集まっている。2014年にSGH(スーパーグローバルハイスクール)※指定校になりましたが、当初は否定的な意見もありました。先生方にとっては初めてで難しい課題が多かった。しかし、教師同士の関係性ができていたからこそ取り組めたし、何よりSGHの授業で変わっていく生徒たちの笑顔が先生たちを動かしました。結果、SGHの中間評価発表では、文部科学省から最高評価の学校に選出されました」

教職の原動力は「子どもたちへの愛」
その「愛」を鍛える方法とは?

――那須さんを突き動かす原動力は何ですか?
「『愛』以外の何物でもないです」

――つまり、その『愛』がないと教職は難しい?
「教師を目指す学生たちが、手っ取り早くその『愛』を身につけようとすると、失敗すると思います。その『愛』を鍛えるには『内省』が必要かもしれない。自分の行動を客観視して、別の見方を考え、自らを変えていける力を養うこと。教師の相手は人だから、百人百様。予測はできないし、同じ子に同じ対処をしても通じないこともある。常に瞬間的に判断して臨機応変に行動しないといけない。そのためにも学生たちには、自分の幅を広げるために時間と努力を惜しまないで欲しいです」

――最後に教職を目指す学生たちにメッセージをください。
「私は、本当に日本を変えようという人に教壇に立って欲しいです。これから大きく世界が変る中で、ありとあらゆる問題に直面する現場へ出ていく人達をつくるのが教師。教師は子ども達の未来をつくることができるんです。それがおそらく日本を変えるし、世界の未来をも変える。それは、SGHの『世界の平和に寄与する人間を育てる』ことにも繋がります」

――『地球市民』というコンピテンシーを持つということ。
「そうです。現在の教育現場は労働に見合った給料がもらえないのは悲しいけれど、自分の使命を信じて教壇に立って欲しい。そして、その魂は絶対愛からスタートしていると思います。だから、学生の皆さんも自分をしっかり好きになって欲しい。自分を愛せないと、絶対に他者を愛せません。自分への肯定感がなければ他者を肯定できません。貪欲に自分を磨いて、いろんなことにチャレンジして欲しいですね」

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SGH(スーパーグローバルハイスクール)
経済危機や紛争、環境汚染など、世界のあらゆる社会的問題に責任を持って取り組み、国際的に活躍できるグローバルリーダーを育てるためのプロジェクト。2014年度から文部科学省が開始。SGHとして、グローバル人材の育成に取り組む高校・中高一貫校を指定した。(2016年4月現在、全国で123校が指定を受けている。)2014年度指定された56校の中間評価が2016年9月に発表され、広島女学院中学高等学校は、6ランクの中の最高評価(4校)を獲得した。