外国で働くために必要なコンピテンシーって? 「自分はどうしたいのか」がすべての基本

カルソニックカンセイインタビュー その3

神宮司:カルソニックカンセイの行動指針は「挑戦・自律・学ぶ」の三つだとうかがいました。実際に働く中で、この行動指針は、社員一人一人の仕事にどのように結びついているのでしょうか。

鶴澤:私にとって、会社の行動指針は、「意識すると、よりよい仕事が出来ること」です。三つの中で一番大切なのは「自律」だと思います。「自分が何をしたいか」「こうやってこの道に進みたい」という自律の精神に、挑戦や学びがついてくるのではないでしょうか。
私は、入社後数年は上司に報連相(ほうれんそう、報告・連絡・相談)をして、指示を待っている状態でした。確かに指示は来るのですが、言われてする仕事はつまらなかった。「なんでこれをやっているのか?」という目的がぼやけてしまうのです。
やはり、自分の考えを入れ、作りたいものを主張することが、いきいきと仕事をするコツなんじゃないでしょうか。仕事で迷ったときに行動指針を見ると、その時の自分に足りなかった部分を教えてくれる気がします。

神宮司:採用面接で、学生が「自律」の精神を持っているか、どう判断しますか。

鶴澤:留学から帰ってきた学生の面接をした際に、「自律」の大切さを実感しました。最初は、志望動機や会社でやりたいことを聞きました。ここまでは立て板に水だったのですが、「今の話を英語で言ってください」と言ったところ、「え、英語ですか?すみません。アドリブには弱いです」と答えたのです。
「こうしたい」という気持ちが芯にあれば、たどたどしい英語でも伝えようとするはず。英語力だけでなく、咄嗟の時の対処も見たかったのですが、残念でした。

神宮司:仕事の中で、鶴澤さんが常に大切にされていることはありますか。

鶴澤:「自分はどうしたいか、自分の意見は何か」ということです。
自分がどうしたいか、しっかりした考えを持っていないと、その後の学びがありません。比べる対象、元になるものがあって、そことの違いを考えるからこそ成長するし、次に活かせるものを得られると思います。

神宮司:確かに「自分はこうしたい」という思いは大切ですが、正直、日本の社会では嫌がられる風潮があるのではないでしょうか。

四戸:カルソニックカンセイでは、社長がよく「自分の会社の運命は社員一人一人が決める」と発信しています。それだけ、個の想いやアイデアが通りやすい会社だと思います。

カルソニック3文中1(神宮司さん)

鶴澤:周りを気にしつつも、「ここは変えないと!」と強く思う部分は、主張していかなければなりません。
社会には様々な人がいるので、相手の傾向も考えながら主張していくことが大切。時には相手を刺激して、議論を引き出すことも必要でしょう。

神宮司:「個のアイデア」も多いと思うのですが、その中で、周囲に受容されるものとされないものの違いは何でしょうか。

四戸:効率性、革新性、変化に対する柔軟性など、様々な基準が考えられますが、その時々の状況で判断は違うでしょう。事務系の仕事でも、設計の仕事でも、その場しのぎのアイデアは、受け入れられにくいと感じます。

神宮司:四戸さんの仕事の中に、行動指針はどう息づいていますか。

四戸:私は、指針に基づいて行動したというより、自分の行動を振り返ると、結果として指針に紐づいていたと思うことが多いです。
タイで3年間働いた中で、最後の1年、購買機能長(タイ拠点の購買部門のトップ)を務めました。会社のコストの60%を握るプレッシャーの中で、与えられた仕事、本社からの要望、拠点のマネジメントなど様々なことを行いました。
トップに立ったのだから、「最後は腹をくくってやるしかない」と開き直りました。何かあったら最後は責任を取ろう、自分が辞めればいいと割り切ったところから、かなり気持ちが楽になり、主体的に考えて組織や仕事、人を動かすことができました。そこで改めて「仕事ってとても面白い」と感じました。
こうした経験を思い返すと、行動指針の「自律・挑戦」と繋がっていたように思います。

長妻:行動指針は、会社の文化のようなものから生まれてきたと考えています。
自分自身を振り返ると、自然と「挑戦」していたな、と思うことが多いです。当時、入社3年目で海外赴任する人はほとんどいなかったのですが、腕には自信があったので「やってやる!」と挑戦しました。
米国に5年間いる間に、それまでは日本で作って送ってもらっていた難しい設備(金型)を、米国中の設備(金型)メーカーを回って調査し、最終的に自分達で準備するに成功しました。新しいことにチャレンジして絶対に成功させるということを支援して貰える環境でした。

●3人が重視するコンピテンシーは……

鶴澤:内的価値
自分の価値観で判断することが大切です。私は説明会で就活生の皆さんに、「差し当たりの人生を決める大事な決断なので、就職活動頑張ってください」と話しています。学生さんはポカンとしていますが、就職活動で一生働く会社を決めようと考える必要はありません。就職活動の時に良いと思う会社を選び、数年経って違うと思ったら会社を移ればいいのです。私もその時その時、「自分がどうしたい」という思いを大切にすることを心掛けています。

四戸:ビジョン
就職する時、父親に「自分が会社に与えられる価値を常に考えろ」と言われました。今もこの言葉を守り続けています。どんなにつまらないと思うような定型業務でも、自分が行うことで何かプラスになることはないか、考えるようにしています。これが私の仕事に対するビジョンです。
コアになる考え方を一つ持っていないと、仕事をしていても働き甲斐、やり甲斐を感じられないでしょう。仕事をすることで、自分が属している社会に何か価値を提供する。その価値が認められ、実感できることが自己実現に繋がる。そうして初めて働き甲斐、やり甲斐が生まれます。
どう自己実現したいのか、ビジョンを持っていなければ、仕事は楽しくなりません。どんなに小さいものでも、ビジョンは必要です。

長妻:成長
昨年管理職になったのですが、「部下が『仕事を通じて成長している』と感じられるためには、どうしたら良いか」と考えながら仕事をしています。期待値をしっかりと伝え、「こう成長してほしいから、これをやってほしい」と伝えることを意識しています。
自ら設定した目標を仕事でクリアしなければ達成感は味わえないし、そこから成長していくように思います。成長するためにどういう課題を設定していくのかが、大切なコンピテンシーではないでしょうか。

カルソニック3文中2(長妻さん)

●取材を終えて

お話を伺った3人が、それぞれ自分の人生や学生生活での経験に基づいて、大切にしているものを持っていることが伝わってきました。卒業論文や学生時代の旅行などで得た力、価値観が仕事に繋がっていることに驚きました。
働く中でも、個の力、挑戦する心の強さが求められること、多様性を理解し、人と関わっていくことが大事であると感じたので、残りの学生生活でも意識していきたいです。(神宮司美玲)