外務省→外資系コンサルから有機野菜等を宅配するネットスーパー「Oisix」(オイシックス)に転職した異色の経歴をもつ高橋大就インタビュー(第3回)

その3 危機感はリーダーシップを育てる まず、渦中に飛び込もう

神宮司:就活について、どうお考えですか。

高橋:昔から、業績のいい会社、知名度のある会社などいわゆる「いい会社」に行けばいいという考えがよくわからないです。私は薬害エイズ事件(1980年代、エイズウイルスが混入した血液製剤が販売され、投与された血友病患者らに感染が広がった事件。国内で600人を超える死者が出た)が起きたとき、「自分が厚生労働省に行かねば」と思いました。いま調子が悪いところ、自分が行かないと、と思えるところに自分は行きたいです。問題を自分事だと捉えたら、それを良くしないといけない、と思うはずなんです。
外務省を辞めることは、苦渋の決断でした。当時は逆風下でもあり、「自分がいないといけない」という思いも強かったです。ただ、それ以上に安全保障よりも経済のほうが「やばい」という思いが勝った結果、省を飛び出しました。
マッキンゼーでも大変でした。最初に「農業をビジネスにする」と掲げたとき、そんなクライアントはいないだろうとバカにされました。ただ、一人だけ話を聞いてくれた人がいて、その人と一緒にがんばり、事業化にこぎつけました。そのプロジェクトが終わった日が、ちょうど2011年3月11日だったのです。ニュースを見てすぐに「やばい」と思い、被災地に入りました。

神宮司:オイシックスと東の食の会、2つの仕事の割合はどうしているのでしょうか。

高橋:100:100です。自分の中で双方にフルコミットしています。
東の食の会では、ずっと流通総額をKPI(主要業績特価指標)においてビジネスをしていました。ただ震災から5年経ち、だいぶ状況が変わってきました。今はブランドを作ろうということで、三陸ブランドの「フィッシャーマンズ・リーグ」を立ち上げ、三陸の海の男たちと活動しています。
福島の農業、三陸の水産業など東北の多くの場所で、とてもかっこいい男たちがバンバン出てきています。ここ1、2年は、福島で「変態チック」な人が出てきていますね(笑)

神宮司:一押しの「変態」を教えてください!

高橋:福島県鮫川村の清水大翼(だいすけ)さん。牛乳を作っているのですが、肩書が「乳(ちち)クリエイター」なんです。そのうち、酪農界に革命を起こすのではないかでしょうか。他にもたくさん紹介したい人がいます。
自分は、変態が時代を突破すると考えています。ぜひ我々を使って、そういった変態的情熱を持った人たちに突き抜けてもらいたいです。彼らに悲壮感、被害者感などは全くない。「可哀想だから買ってあげよう」などという状況ではないです。水産高校では、水産業に進みたくないといっていた生徒の半分が「フィッシャーマン」を見て水産業にあこがれ、漁師になりたいと言うようになりました。
今、本当に東北はアツいですね。日本を変えていく力があると思います。東北と関わっていると、危機がリーダーシップを作ると痛感します。平時には出てこないような強い気持ちを持つ人が、出てきます。覚悟が違う。修羅場、危機はリーダーシップを育てますね。だから、学生時代に慣れない環境、難しい問題に飛び込むなど修羅場を経験することは意味があると思います。

神宮司:なぜ今、東北にリーダーシップを持つ若者が多いと思いますか。

高橋:例えば秋田は人口がどんどん減っている中で、リーダーシップを持った若い人たちが次々出てきています。福島でも、食に携わる人がいま強烈な危機意識を持って活動していますね。
同じ若者世代でも、三陸、福島などの東北の人たちは未来を語ります。それは自分を超えて、地域社会に対して自分が責任を負っているからでしょう。自分が稼がないと、若い人が漁業に来ない、産業が倒れることが目に見えているのです。そういった強烈な未来に対する責任を持つという意識は、東京ではなかなか持つことが難しいと思います。

神宮司:では、東京の学生がリーダーシップを身につけるためにできることは何ですか。

高橋:私はまず大学生に「東北に行け」「地方の疲弊を見て、自分に何が出来るか考えろ」と言います。自分で飛び込み、考えて動く経験を学生時代にすることが財産になると思います。
東北は一例ですが、どこでもいいので自分の関心、問題意識を持っていることに飛び込んでみることは意味があると思いますね。東京でニュースとして聞き、評論家として語り知識だけ貯めているのと、現場に行き、自分が一体何ができるかを考えることは全く違います。

神宮司:最後に、就活生にむけてメッセージをお願いします。

高橋:働くという分野は、今一番大きく変わっている分野だと思います。今までのように「スーツを着て就活をする」という常識に囚われず、自分が本当に人生をかけて取り組みたいことは何かを考えてほしいです。
生きていく中で変わっても構わないと思います。今真剣に考えてやるべきことは何か、それにまっすぐに突き進めば良いのではないでしょうか。どの業界が調子良いかを考える必要はありません。自分が入った業界を調子よくしたい、と思えるようになってほしいです。

●高橋さんが重視するコンピテンシーは……
個人的実行力。
やるのは組織でもいいが、最後は個で戦える、自分一人でもやるんだ、最後まで自分が背負うという責任感が大事だと思います。

●取材を終えて
自分の想いに対して真っ直ぐに、力強く行動する高橋さんの姿が印象的でした。
学生のうちに自分と異なる背景や価値観を持つ人々、社会の課題の最前線に触れて何が自分の心に響くのか、その時どう感じるかを知ることの重要性を感じました。物事を自分事として捉えると、自分なりのリーダーシップを持って社会と関わり、社会のために働くことができるように思いました。(神宮司)