Vol.1 どうしたら「志」を持てるんですか? 「青山社中」筆頭CEO・朝比奈一郎さんに聞く

グーマガ学生特派員が聞く!

「グローバルに活躍したい!」でも、どうやって? 何をすればいい?
悩んだときは、先達に聞いてみよう。
海外インターンシップ事業の運営を通して、世界で発揮されるリーダーシップの変革を目指す学生団体「アイセック・ジャパン」のメンバーがGROW MAGAZINE(グーマガ)の学生特派員となり、いろいろな人に会いに行きます。
1回目は、経産省官僚から転身して日本の活性化を基本理念に据え、リーダー育成事業などを営む会社「青山社中」を立ち上げた、朝比奈一郎さんが登場します。

その1 無駄なこともたくさん経験を!

柏倉 朝比奈さんのこれまでのインタビューを読ませていただき、ご自身の活動や人生の中で非常に「志」を大切にされていると感じました。グローバルに活躍するために、「志」はどれくらい重要だと思われますか。

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グーマガ学生特派員・柏倉明郎(慶応義塾大4年/アイセック・ジャパン)

朝比奈 志をどう捉えるかは、様々な見方があると思います。私自身の経験で言うと、志があって全てが決まってくるというくらいに志はなくてはならないものです。例えば就活をしていて就職先を決める時、自分が人生で何を成し遂げたいか、それを成し遂げるためにこういうスキルをつけたい、だからこういうところで働きたい――と考える。そのもとになるのが「志」だと思います。
別の言葉で言うと「想い」。想いや志が無いと何も判断、決断できないというのが私の仮説です。志がない中で例えば就職先を決めようとすると、給料の良さなど客観的、定量的に判断できる要素で合理主義的に判断をしてしまうでしょう。合理的に考えれば、ベンチャー企業に行くような判断はできません。でも、自分に志があり、それを達成したいと考えるなら、そうした選択肢も出てくるわけです。
志のきっかけとなる想いをどう作るかが、志を持つためには大事ですね。

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朝比奈 一郎 青山社中筆頭代表 1973年東京都生まれ。1997年に通商産業省(現・経済産業省)に入省しエネルギー政策やインフラ輸出などに携わる。2003年に「プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)」を立ち上げ。2010年に退官し、青山社中を設立。

柏倉 志を持つ大学生が減っているのでは、という意見もあります。
朝比奈 それは、どの時代と比べるかによると思います。私は人材育成のための「青山社中リーダー塾」を5年前に立ち上げて大学生ともかかわる機会があるのですが、私の学生時代(20年前)と比べて今の学生の志が特別低いとは感じません。よく「日本人の学生が内向きになった。留学する学生も減っている。志が低いのでは」といいますが、留学のパターンが昔よりも増えたので、単純に長期留学生の数だけを見て判断することはできません。
ただ、志を持つ若者の絶対量は今も昔も少ない。だから、今の状況でいいとは思いません。志を持つ人の数を増やさないといけないと思っています。

柏倉 なぜ、絶対量が少ないと思われますか。

朝比奈 みんな、単純に損得で学生時代の行動や将来を決めてしまっているからではないでしょうか。別の言葉で言えば正解を作ろうとするのではなく、正解を選ぼうとしすぎているというか。
志の有無には、高校生時代も含めた学生時代の過ごし方が影響します。ですが多くの若者が、例えば医者になれば得だから医学部に行く、そのためにはこの勉強をする、というように全て合理主義的、客観的に一番損しない選択をしています。
自分の人生を深く見つめ直し社会を考えるというようなことをせず、一番得をできそうだという基準で選択を行う人が絶対量として多い気がします。志で自分の人生を選択する人の絶対量を増やさないと、社会は変わらないと思います。

神宮司 朝比奈さんはよく「人生はかけ算の九九(1×1、2×2、3×3……)の年にあわせてステージが変わる」というお話をされています。いま私たちは16歳(4×4)から25歳(5×5)までのステージにいますが、このステージで志を育てるためにはどのような過ごし方が大切になるのでしょうか。

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グーマガ学生特派員・神宮司美玲(東京大4年/アイセック・ジャパン)

朝比奈 簡潔に言うと、学生時代には無駄なことをやった方がいいと思います。
役所に入るために大学一年生から予備校に通うというような合理的行動ではなく、一見無駄に思えることが人生には必要です。
合理性の根本には、A→B、B→Cという論理展開がありますが、そもそも出発点のAが正しいと言い切れるでしょうか。資格試験に合格することが人生で本当に成し遂げたいことなのか、考えるべきだと思います。
出発点を見定めることは簡単ではありません。生まれながらによほど強い思いがあれば別ですが、そのような人は多くないでしょう。多くの人は、大学時代に出発点の決断に迫られます。その決断に当たって、無駄なことを含めて様々な経験をすることが大事ではないでしょうか。
万巻の書を読む、千里の旅をする、百人と議論するといったように、一見明確に何かの役に立ちそうにないことの中にこそ、人生の役に立つことが含まれています。そうした経験をすることで、自分が人生で成し遂げたいことに気づくことができると思います。

柏倉 「身近な人の死を経験することで、自分が人生をかけて成し遂げたいことや、熱意を持てることに気づいた」という発言をされていたかと思います。

朝比奈 死を目前にすることで、人間は真剣に自分自身と向き合うようになります。自分自身が九死に一生を得るような経験をすれば、更に自分自身の人生について考えるようになるでしょう。その本質は、有限の人生をどう生きるべきかについて考えるということです。

柏倉 死を通す以外に、自分のやるべきことに気づく方法はあるでしょうか。

朝比奈 衝撃的な先人の人生に感銘を受けたり、伝記を読んで影響を受けたりすることで、人生に向き合う機会を作ることができます。このような人生に向き合うきっかけには意図的に出会うこともあれば、偶然出会うこともあります。
大事なのは日々真剣に生きるということ。「必死」という言葉があるが、大げさに言うと「必ず死ぬ」と思って日々生き、それだけ真剣に物事に向き合っていると、得られるものがある。一見無駄だと切り捨ててしまいがちなことに対しても、一つ一つ真剣に取り組むことが求められているのではないでしょうか。

※青山社中リーダー塾の入塾申し込みは4月17日まで。