Vol.2 「カルチャー」を軸に企業を選べば、就活は変わる?

左:柏倉さん、右:神宮司さん、手前:朝比奈青山社中筆頭代表

グーマガ学生特派員が聞く!

「グローバルに活躍したい!」でも、どうやって? 何をすればいい?
悩んだときは、先達に聞いてみよう。
海外インターンシップ事業の運営を通して、世界で発揮されるリーダーシップの変革を目指す学生団体「アイセック・ジャパン」のメンバーがGROW MAGAZINE(グーマガ)の学生特派員となり、いろいろな人に会いに行きます。
1回目は、経産省官僚から転身して日本の活性化を基本理念に据え、リーダー育成事業などを営む会社「青山社中」を立ち上げた、朝比奈一郎さんが登場します。

Vol.2 「カルチャー」を軸に企業を選べば、就活は変わる?

朝比奈 就職活動に関しては、入りたい企業を業種だけで選ばないという考え方もあります。何か自分を動かすような原初的な体験があるなら、例えば「絶対にアパレルに行きたい」みたいな形で、業種で選ぶのも一つの選択だとは思いますが。

 商社志望であれば、例えば三菱商事と伊藤忠を回り、自動車志望であれば、例えばトヨタとホンダに回る、みたいになりますが、むしろ仕事の分野は違うものの、ホンダと伊藤忠、トヨタと三菱商事には共通点、同じようなカルチャーがあると思います。三菱商事やトヨタは創業家や組織をとても大切にするカルチャーですが、伊藤忠やホンダで会社の危機に創業家が出てくることはありません。ただ、このカルチャーはHPを見たりOB訪問をすればある程度は分かりますが、中々見抜きにくいことも事実です。訪問しまくるしかないのかもしれません。

朝比奈さん_Z7A9226

朝比奈 一郎 青山社中筆頭代表

 就活に際して「やりたいことを探そう」ということを言いますが、青山社中のリーダー塾に集まる学生の塾生などと話していて感じるのは「やりたいことがわかれば苦労しない」ということですね。私は就職活動の時、人生を振り返りながら、空いている時間をぬって様々な仕事を見て回りました。企業の活動内容や理念に関する真剣な説明を学生が聞くことができるのは、人生においても就職活動以外にありません。

 中島みゆきさんの「時代」という歌の中に「旅を続ける人々は いつか故郷に出合う日を」という詩があります。最初に聞いた時は故郷に「帰る」ではなく「出会う」と歌われていたことに違和感を覚えましたが、あとあと腑に落ちるようになりましたね。就活に例えると、様々な企業や社会人の話を聞くことで、ようやく故郷と呼べるような本当に自分がやりたいことに出会うことができる、ということなんだと思います。就活でそうした故郷に出会うためには、やはり最初から企業の分野を絞りすぎないほうが良いでしょう。

柏倉 業種を最初から絞るのではなく、色々な企業を回りながらカルチャーで企業を選ぶという考え方に共感しました。私の周りでもカルチャーを軸に企業を選んでいる学生は確かにいます。ただ現状をみると、内定がほしいために企業のカルチャーに学生が無理に合わせている、迎合しようとしている側面もあると思います。

朝比奈 この問題は「表層」と「根源」の二段階で考えるべきでしょう。

 企業が求める人材像に応えようと、学生が面接で無理やり自分を企業が求める人材像のように見せようとすることは、確かに問題です。企業側としても、自分が本当に一緒に働きたいと思う人というよりは、役員に説明しやすいように学生を採用している側面があるのでしょう。そうした現状が就職活動をある種の「ゲーム」のようにしてしまっていると思います。こうしたことは、特に大企業や大きな組織で起こりやすいです。企業側もどういう人材を採用することで、自分の会社にイノベーションが起こるのか、もっと真剣に考えるべきですね。

 より根源的には、客観的に透明でわかりやすいプロセスを導入することの弊害が出ていると思います。日本社会に変革を起こすようなリーダーの採用を掲げる企業は多くありますが、実際にそうした人材の獲得に奔走している企業は少ない。企業も学生も就職活動において英語のスコアや学歴などの定量性に偏り、合理主義や客観主義を重要視するという大きな流れが、変革型リーダーを採用できない「就活ゲーム」のような体制を形作っていると見ることができます。

神宮司 学生が就職活動の際に業種だけを見てしまうのは、自分の志が明確でなく、表層的な体験だけに焦点を当ててしまうためだと考えています。学生が企業のカルチャーを軸に就職活動をするためには、企業や学生はどうしていけばいいのでしょうか?

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グーマガ学生特派員・神宮司美玲(東京大4年/アイセック・ジャパン)

朝比奈 一般論として企業側が変わるのは困難だと思います。就職ゲームをやっていられなくなるほど厳しい状況に置かれなければ、企業側から体制を変えることは困難でしょう。外部環境の変化や、企業内で偶発的にある鍵となるポジションに面白いリーダーが着くことで、企業の体制が変わることは考えられます。

 私は学生側の方が変化の幅は大きいと考えています。自分の進路を決める際に、合理的・論理的に考えすぎないことが大切です。物事には定量と定性の二つの側面があります。定量的な側面は比較しやすいため、意思決定の際にそちらにばかり目が行きがちですが、定性的な側面こそ重視するべきです。定量的なデータだけ見ればA社の方が魅力的だが、その会社の風土や働いてる人たちの人柄といった定性的な側面にも目を向ければ、B社の方が自分に合っていると決断できる場合も多いでしょう。内定を取ることだけに汲々とするのではなく、真に自分と合うところを選ぶという気持ちが大切です。

柏倉 いや、学生だけが変わっても社会全体の仕組みは変わらないのではないのでしょうか。現状の就活制度では、優秀な学生ほど自分の将来について深く考えるよりも、いかに面接担当者の気を引くプレゼンテーションができるかについて考える傾向があると思います。企業の採用制度を抜本的に変えるべきではないでしょうか。

朝比奈 まったく正論です。

 しかし、もう一歩進んで考えてみてください。その仕組みで世界が回っている現状の中で何ができるかを考えると、自分が馴染まない企業には極力行かないこと、そして企業に入っても志を失わないようにすることが大切ではないでしょうか。戦略論にはなってしまいますが、企業に媚びて入社するような方法をとらない方が良いと思います。

 就活をゲームと割り切って、入社後にその環境の中で自らの志を持つという考え方もあります。少し話は逸れますが、近年イントレプレナーシップという言葉が注目を浴びるようになりました。社内ベンチャーのような取り組みで、日本人には馴染みがあるようにも感じます。組織の中にとどまり、内側から行動を起こすのがイントレプレナーシップです。アントレプレナーシップにしても、イントレプレナーシップにしても、どちらが自分のカルチャーに合うかが大切です。そうした意味でいうと、自分の志向性と合うカルチャーを持つ企業に行くことがやはり大切だと思いますね。