vol.3 合理性にとらわれず行動を 学生時代は「抽象的思考力」養って

写真:朝比奈青山社中筆頭代表

グーマガ学生特派員が聞く!

「グローバルに活躍したい!」でも、どうやって? 何をすればいい?
悩んだときは、先達に聞いてみよう。
海外インターンシップ事業の運営を通して、世界で発揮されるリーダーシップの変革を目指す学生団体「アイセック・ジャパン」のメンバーがGROW MAGAZINE(グーマガ)の学生特派員となり、いろいろな人に会いに行きます。
1回目は、経産省官僚から転身して日本の活性化を基本理念に据え、リーダー育成事業などを営む会社「青山社中」を立ち上げた、朝比奈一郎さんが登場します。

vol.3 合理性にとらわれず行動を 学生時代は「抽象的思考力」養って

神宮司:朝比奈さんがこれまで一番、合理性にとらわれずに決断したことを教えてください。

神宮司さん

神宮司さん

朝比奈:経済産業省を辞めて、今の会社(青山社中)を作ったことですね。そのまま経産省にいたら、大きな失敗さえなければ順調に管理職にになれる可能性は大きかったと思います。そのタイミングで、一般的には公務員を辞めたことは合理性に反する決断でした。
 坂本龍馬が結成した「亀山社中」のような日本の活性化を目的とする会社をつくろうと社名もあやかり、「亀山」と似た地名の「青山」にオフィスを構えて青山社中としました。レンタルオフィスから始め、信用がない中でのスタート。自分の決断が正しかったかは分かりませんが勝負どころだと感じ、直感に基づいて下した決断でした。

神宮司:合理性にとらわれず、強い思いを持ち続けて活動する秘訣はあるのでしょうか。

朝比奈:私自身が達成できているわけではありませんが、自分が本当は何をしたいのかを考え続けることです。
 何かを成し遂げるためには思考力よりも、思考体力や思考意欲のほうが大事。これは、普段から自分の人生の中で何を成し遂げたいのか考えることで鍛えられます。表面的な損得だけでなく、本質的なところを考える意識を持った方が良いですね。

柏倉:学生時代の活動の中で、合理的ではなかった選択・活動が今の自分につながっていると感じる経験はありますか。

柏倉さん

柏倉さん

朝比奈:いくつかありますが、ひとつは弁論部の経験です。
 弁論部は集まって議論しているだけで、一見プラクティカルに何かの役には立たないイメージがあります。しかしみんなで集まって議論したことは、私の思考意欲や思考体力を養ってくれました。
 弁論部には哲学が好きな人が多く、資本主義や合理主義の本質などを考える機会がたくさんありました。当時から、数値や合理性だけから判断することに疑問を感じる機会となっていたのでしょう。
 また、官僚を目指していた当時は日本の治安を守ることに憧れ、警察庁を志望していました。ところが、様々な省庁を回っているうちに経産省(当時は通産省)のカルチャーの面白さに気付きました。合理的に考えれば、当時は通産省不要論が囁かれており、警察庁に入った方が安定するという判断を下したでしょう。しかし、結果としてカルチャーに共感した経産省への入省を決断しました。

柏倉:青山社中はいま、どういう人材を求めていますか。

朝比奈:国や社会のことを真剣に考え、変革に向けた行動を取れる人を求めています。政治参加や起業といった特定の分野での志を求めているわけではありません。国や社会のあり方を真剣に考えることと、変革に向けた行動を両立することは当たり前のようですが難しいことだと思います。

朝比奈さん

朝比奈筆頭代表

弁護士や政治部の記者なども、国や社会について考えれば考えるほど、現状が仕方なく思え、変革に向けた行動を取れなくなりがちなのが現状です。一方で変革に向けた行動を取っている人の多くは、例えば節税のための本社の海外移転など、損得勘定が先立ち、国や社会に対しての考えが足りません。NPOの方々も、様々な取り組みはしているものの、根源的な課題について考えて提案などをしていることが少ない印象を受けます。素晴らしい具体的な活動に加え、大局観や視野の広さに基づく行動も重要だと思います。

編集部:GROWではいま、アプリを通じて学生個々人の「コンピテンシー」を定量化する取り組みを行っています。ご自身の経験も含めて、学生時代に意識して伸ばした方が良いと感じるコンピテンシーはありますか?

朝比奈:自分の頭で考えて作る、創造性が大事だと思います。
 想像(imagination)と創造(creation)は繋がっています。リーダーシップを発揮する上でも、構想がなければ動けません。自分で想像したものを創造していくことが非常に重要だと考えます。
 別の言い方をすると、抽象的思考力と言えるでしょうか。社会人になって抽象的な思考を求められる場合は多いが、学生時代にそういった思考をする機会は少ないです。

神宮司:創造力、抽象的思考力を身に着けるためにご自身で意識したこと、役に立ったことはありますか?

朝比奈:抽象的ですが、様々な経験と言うしかないですね。できるだけたくさんの書物を読んで、知識を吸収し、旅に出るなどして自分なりの考えを深め、そして先述の弁論部のような場で人と意見をぶつけ合うといった経験でしょうか。

●朝比奈さんが重視するコンピテンシーは……
創造性、抽象的思考力

●取材を終えて
神宮司
朝比奈さんの高くて強い志が大学生活の弁論部や剣道といった一見すると“無駄”だと思われがちな経験によって育まれていることに、驚きました。
学生生活と社会人生活を切り離し、就職活動を目先の利益や合理的考えで行ってしまう傾向が学生、社会共にあります。
自分の人生をかけて果たしたい志を、社会という次なるフィールドでどのように果たすか。就職活動をカルチャーを軸として行うと、自分が志をどのように果たしていくのかを考えるようになりました。

柏倉
朝比奈さんからお聞きした「故郷に出会う」というお話が大変印象深かったです。就職活動では、社会的な地位や給料などの面で、自分にとって合理的な進路に進む学生が多いと思います。しかし、自分の「志」や「想い」を実現することを考えれば、合理性だけに囚われていてはいけないと強く感じました。自分の「志」を実現するために「故郷」と呼べる何かに出会い、その「志」を胸に抱きながら働き続ける、そのような姿でありたいと強く感じました。