外国で働くために必要な「コンピテンシー」って? 英語は「水漏れシャーシャー」でも可!大切なのは人間力

その2 英語は「水漏れシャーシャー」でも可!大切なのは人間力

神宮司:いまはいろいろな会社が、「グローバルで活躍できる人材」を求めています。ただ、実際に活躍するためにどんな力が必要なのか、正直わからないところがあります。みなさんグローバルを舞台に仕事をされた経験をお持ちですが、その経験からどんなスキルや能力が必要と感じたか、教えてください。

長妻:海外で働くためには語学力、特に英語力が必要と思われがちです。ただ、私は一番大切な力は自分の思っていることを相手にしっかり伝える力だと思います。英語は、そのための一つのツールに過ぎません。
海外勤務の中で、日本から出張で来る人たちと多くかかわってきました。その中で活躍できる人とできない人との違いは、自分がやりたいことを死にもの狂いで伝えているかどうかでした。自分はこうしたいと考えている、だから君はこうして欲しい、と伝える力が海外勤務の現場では問われます。
英語を喋ることがとても苦手な同僚がいたのですが、ある時、製品製造に使う型から水が大量に漏れていたことがありました。英語だったら「water leaking!」とか言うところですが、彼は「水漏れシャーシャー!」と米国人に言った。すると、何か大変なことが起こっていることは伝わったらしくすぐに彼らは修理にかけつけてくれたというのです。これは極端な例ですが、単語を並べるだけでも何でも自分がやりたいこと、何を協力してほしいかを明確に伝える力が、国内外に関わらず大切だと思いました。

神宮司:長妻さんはアメリカに5年間いらっしゃいましたが、自分の思っていることを伝える際に最も苦労したことは何ですか。

長妻:私は、伝えたいことは結構伝えていたと思っています。出向先の会社がすでに日本人を受け入れる文化を持っていたため、恵まれていたと思います。一方で、会社から一歩出たところで会社のルールや自分の基準をもとに話すと通じないことが多かったです。例えば他社との試作業務の時、弊社として品質を満足させる為に必要な要求を訴えても「(今までの製品でも)過去に問題が起こっていないからこのままで大丈夫」と言われました。品質に対する考え方が違うので、いかに説得するか、わかってもらうかが大変。私はエンジニアなので、データで違いを示していくしかありません。データでどう品質のよさを示すかを意識しました。それでもうまく伝わらない時は、とにかく粘る。最後はフェアに、対等に、双方の合意をとるように心がけました。

神宮司:伝えたいことを伝える力をつけるために学生時代にご自分がやっていたことや、やっておいた方がいいと思われることはありますか。

長妻:学生時代に海外の人と関わったことは全くないです。前回卒論の話でもいいましたが、自分のやっていることに自信を持つことが大事だと思います。卒論の発表やゼミでの話し合いなどで、普段から自分の思っていることをしっかり伝える経験を積み重ねていくことで、「伝える力」は自然と身につくのではないでしょうか。

神宮司:四戸さんは、グローバルで働くために必要な能力についてどうお考えですか?

四戸:私も長妻さん同様、言葉はツールに過ぎないと思います。最も大切なのは、自分が思っていることを伝えようという意志です。
意志とは、自分なりのビジョンがあり、そこに向かって自分はこうしたい、だから協力してほしいという思いのことです。この思いやビジョンを作る上で、学生時代に様々な経験を積んだことが活きているように思います。具体的に何がどう活きたかということは明確に言えないのですが、経験を通じて自分の中の引き出しが増えたという感覚はあります。国内外問わず、突発的なことが起こったときには過去の知識や経験を引っ張り出して解決策を見つけていくことになるわけで、引き出しが多くないと対応できません。学生時代は自分で様々なことに挑戦し、引き出しを増やすことが大切だと感じます。学生なのだから、失敗してもいい。自分の中で次に活かせれば、失敗はその人にとって失敗ではなくなるのではないでしょうか。チャレンジを恐れないでほしいと思いますね。

神宮司:鶴澤さんはいかがですか。

鶴澤:よく言われますが、「人間力」が大事ではないでしょうか。

神宮司:具体的にはどういう力なのでしょうか。

鶴澤:世界を相手にする現場では、論理的な部分と感情的な部分を兼ね備えた人が求められています。論理だけでは相手を動かすことはできません。感情的な部分も含めて相手を引きつけられる力が「人間力」だと思います。それを磨くためには様々な人と接し、肌感覚で相手がどう考えているのか、自分と真っ向から対立するような人と接した時に相手がどう思い、自分はどう感じるのかを考え、経験を積み重ねることです。

神宮司:海外赴任中に「人間力」の大切さを感じたことはありますか?

鶴澤:ある材料の使い方に関して相手先と打ち合わせをしていたのですが、主張がなかなかかみ合わず、議論の途中で相手がパソコンをバタンと閉じ、怒ったのです。そんな事態にもかかわらず私は、「日本人の私に向かって感情を露わにしてくれた、本気の話が出来ている」という喜びを感じました。自分の主張を分かってもらいながら、相手を引き付けていく。技術に関わる話なのでロジックがないとだめですが、加えて相手の感情を引き付けることも大切だと学びました。
アメリカで働いていて驚いたことは、欧米の人が日本人以上に議論の上で相手をおもんばかることです。相手を傷つけないようにしながら、自分の主張をしている。日本人と海外の人とで阿吽の呼吸が取りづらいからこそ、相手が気を遣ってくれるのです。コミュニケーションに対する考え方から異なり、相手をどう自分に引き入れるかに関して気を遣っていることをすごく学びましたね。

神宮司:学生時代に、人間力が磨かれたと思う経験はありますか。

鶴澤:中学、高校は自分と似た人との人間関係で完結できていたのですが、大学に入ると人間関係の幅が広がり、たとえばアメリカンフットボールの仲間で、「主張は間違ってはいないが何が違和感をおぼえる」というタイプの人にも出合いました。そういう人とチームとして共にやっていく中で、様々な人と共に活動するときに大切なことを学んだと思います。
また、大学時代はアメリカ人の先生から英語を学びました。単位にはなりませんでしたが自分で興味をもって飛び込むことで、いろいろなことに気づけたと思います。単純な話、金髪碧眼の人を目の前にしてもぜんぜん驚かなくなる、など。テレビで見るだけでなく実際に海外の人と接して、話して、何が伝わって何が伝わらないのか、肌感覚で体験することが大切だと思います。