まずは、「NON」と言ってみよう!

1996年、私が当時勤務していた東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)の留学制度を利用して、フランスのINSEAD(インシアード・欧州経営大学院)に留学していたとき、最初に感じた大きな違和感は、友人となったフランス人が、私が何を言おうと必ずいつも「ノン(No)」と返事してくることでした。

ある日、私は意を決して彼にこう尋ねました。「なぜ君は、僕の話にいつも『ノン』と返してくるの? なにか不満でもあるの?」すると彼はこう答えました。「君が話したことに対して、僕が『ウィ(Yes)』と返したのでは、会話が深まらないじゃないか。」それまでの私にはなかった感覚に気づかされ、とても驚きました。そして、頭の中で新しい思考回路が突如としてつながったような感覚に襲われたのです。

それからというもの、会話するときに私も意識して「ノン」と返してみることにしました。すると、たしかにお互いの意見が深まることがわかりました。つまり、ディスカッションの中から創造力が作られるという“対話のダイナミズム”を実感したのです。

異なる意見を戦わせることで、より正しいと思われる考え方に向かう。これこそ、まさに哲学的思考法の醍醐味です。そうやって、「正解のない問題」をお互いに探っていくという感覚です。私たちの未来には、「1+1=2」や○×問題のように唯一絶対の正解があるわけではありません。未来という正解のない問題に対して、より正しいと思われる道をたどっていく。人生はその繰り返しです。

また、企業において、答えがわかる問題など存在していないのです。答えがあるのであれば、競争市場において簡単に他者がその答えのように行動し、そもそも最初に動いた企業以外に利益などでてこないのです。

グローバルに活躍するためには、共通言語としての語学力が必須であることは間違いありませんが、語学力以上に必要な力が、しっかりとした哲学的思考法であり、より正しい方向に皆で向かっていく態度なのです。

次回は、「知識とはなにか」について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。