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「影の戦争」の戦術は、痛みを伴わない無人機攻撃 AIで自律型殺人ロボットの出現?「命を懸けない戦争」の恒久化の恐れ

民間人の間に隠れて自爆テロも辞さないテロリストに対し、忍者のような隠密作戦で標的殺害を繰り返す米CIAの要員――9・11以降、エスカレートする一方の「影の戦争」で、アメリカ側が頻繁に行使している「忍びの術」が無人機攻撃です。

アメリカによる無人機攻撃は、とりわけ、自国と戦争状態にないパキスタンやイエメン、ソマリアなどの非戦闘地域で多用されています。ワシントンのシンクタンク、New America Foundationの推計によれば、オバマ政権下のCIAがこれまでパキスタンで実施した無人機攻撃は計355件。ブッシュ前政権時代の約8倍です。抹殺された過激派メンバーは計1650~2687人、巻き添えで亡くなった民間人も129~161人とみられています。

無人機は、レーザー誘導の空対地ミサイルを搭載し、紛争地から遥か遠くに離れたアメリカ国内の基地から通信衛星を利用して遠隔操作されます。パイロット(操作員)は、エアコンの効いた部屋でスクリーンに映し出される戦闘空間(battle space)を見ながら、ミサイルのボタンを押します。無人機による殺害は、何があっても米兵の犠牲を伴わないため、「ゲーム感覚の殺害」としばしば批判されています。

しかし、パイロットの犠牲ゼロ、ピンポイント攻撃、空爆や地上軍の投入に比べれば低い民間人犠牲の割合、しかも安価。これだけ条件が揃うと無人機攻撃は止まるところを知りません。オーストラリアの政治倫理学者の言葉を借りれば、物理学の永久運動のように果てしなく続く恐れがあります。米兵の遺体袋が米国内に到着する光景がテレビに流れると、厭戦・反戦ムードが広がりますが、無人機攻撃ではブレーキがかかりにくいです。

いまは、遠隔操作(リモコン)型の無人兵器が主流ですが、人工知能(AI)の開発が進めば、人間の指示を全く受けなくても戦闘任務を遂行できる自律型ロボット兵器の実用化が必至とみられています。そうなれば、「命を懸けない戦争」に今以上に安易に走るではないかと、ヒューマン・ライツ・ウォッチなど国際NGOが「殺人ロボット禁止キャンペーン」を展開しています。国連でも議論が始まりました。SF映画のようなシナリオが現実味を帯びてきたと言えます。

杉本 宏(すぎもと・ひろし)
朝日新聞社教育総合本部 シニアスタッフ
1984年に朝日新聞社に入社。政治部、外報部記者を経て、ロサンゼルス支局長、アトランタ支局長、ワシントン総局員などを務める。五輪やW杯、ハリウッドの動向からロサンゼルス暴動、9・11同時多発テロ、米ロ首脳会談など、国際問題を幅広く取材した。共著に「アメリカ解体全書」(KKKベストセラーズ)。昭和女子大現代ビジネス研究所の研究員も兼ねる。