エチオピア、反政府デモ活発化で非常事態宣言を発令 ネット接続も遮断

(写真はエチオピアの首都アディス・アババの様子。経済発展著しいなか、反政府の抗議運動が活発化している。©Kiyori Ueno)

連載:世界は広く、おもしろい!

今、私のいるエチオピアが重大な事態に陥っている。昨年11月から続く反政府の抗議活動が前代未聞な規模にまで発展し、ついに今月8日、政府は国内全土に6カ月間の非常事態を宣言した。エチオピアで非常事態宣言が出されるのは、現在の与党が25年前に政権に就いてから初めてで、大規模な抗議活動が起きていない首都アディス・アババでも連邦警察の数が増えるなど警戒モードが高まっている。

抗議活動を行っているのは主にエチオピアの人口の32%を占める最大の民族集団でアディス周辺部に広がるオロミア州に住むオロモ人と、アディスの北のアムハラ州に住む人口の30%を占めるアムハラ人だ。多様な民族が存在するエチオピアでは、人口の6%を占めるに過ぎない少数民族である北部ティグライ州のティグレ人によるティグレ人民解放戦線が支配する与党エチオピア人民革命民主戦線による独裁政治が20年以上も続き、オロモ人やアムハラ人は政治などの面で脇に追いやられ、差別を受け続けてきた。

強権政府として知られるエチオピア政府はこれまで反政府的な運動を弾圧したり、表現の自由を制限し、政権に批判的なジャーナリストや当局に異を唱える人々を政治犯として投獄するなどして国際人権団体からも批判されてきた。2005年には総選挙の結果に反対する市民たちが集ったデモを当局が弾圧し、約200人が死亡。このような政府の弾圧を恐れたエチオピア人は長い間、政府に対して声を上げてこなかった。

しかし、昨年オロミア州で土地の強制収容計画が出されたのをきっかけに政府に対する抗議が活発化した。立ち退きを求めるこの計画に反対した人々は反政府デモを展開。当局はこの動きを弾圧し、衝突が起きていた。抗議活動は激化し、政府に不満を持つアムハラ州にも飛び火した。そして今月2日、アディスから40キロ南のビショフトゥで開かれたオロモ人の祭りで少なくとも52人が死亡するという大惨事が起きた。国際人権団体や同国の活動家は治安部隊が群衆に発砲するなどして500人以上が死亡したとしている。その後も外国資本の工場が放火されたり、アディス郊外ではアメリカ人の女性研究者が乗った車が投石され、亡くなるという事件も起きている。

読者の中には、今年8月に開催されたリオデジャネイロ五輪の男子マラソンで、抗議のジェスチャーである、両腕を交差させてゴールした銀メダリスト、フェイサ・リレサ選手の姿を覚えている人も多いだろう。リレサ選手はオモロ州の出身だ。彼は祖国では危険でできないジェスチャーを世界の舞台で行い、圧政を行う政府への抗議を身をもって示したのだった。

今回の反政府抗議活動において、ソーシャルメディアの果たした役割は大きい。抗議デモはフェースブックなどのソーシャルメディアを通じて広がった。また、人々は反政府のコメントなどを次々と掲載し、声を上げた。エチオピア版「アラブの春」だ。

エチオピアでは今、インターネットのアクセスが極度に制限されている。3Gは機能しておらず、フェースブックは無線接続があるオフィスや高級ホテルでも完全にシャットダウンされている。つまり、一般のエチオピア人は、インターネット、ソーシャルメディアが全く使えない状況になっているのだ。

非常事態宣言により、政治的メッセージが禁止され、集会やデモが制限され、裁判所令状なしの逮捕や家宅捜索が可能になった。結果として現在、反政府活動は沈静化している。けれども、反政府抗議の動きは今後も拡大すると見られている。政府は力により合法な反政府運動を押さえ込んでも、世界中がエチオピアで起きていることを瞬時に知ることができるようになった今、自由を求める人々の運動を押さえ込むことはもはやできないと知るべきだ。エチオピアが一日も早く、真の民主主義を実現させることを心から祈りながら、今度どのように動きが発展していくのか、見守りたい。私自身、このコラムのように政府に批判的なことを書いていると、逮捕されるか、国外追放になる可能性があるから十分気をつけるようにと国連時代の元同僚たちから助言されている。さすがの当局も日本語を検閲するのは難しいだろうと楽観的でいることにしよう。

上野きより ジャーナリスト、フォトグラファー、元国連機関職員
信濃毎日新聞社、ブルームバーグ・ニュース東京支局などで記者として働いた後、国連世界食糧計画(WFP)のローマ本部を経て、食糧支援の現場であるエチオピア、ネパールで働く。2016年から独立。米国コロンビア大学国際関係・公共政策大学院修士課程修了。慶應義塾大学文学部卒業。東京出身。