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たかが爆買い、されど爆買い 他人事では済まされない中国の矛盾 中国とどう付き合っていくべきか――中国人作家の講演会で考える

中国人の訪日観光客の「爆買い」が下火になっています。地元経済への影響を懸念する声が浮上していますが、日本が心配すべきは爆買い現象に象徴される中国の矛盾ではないでしょうか。先日、社会派の中国人作家の講演を聞いて、そんな思いに駆られました。

先月末、2016年に日本を訪れた外国人が初めて2000万人を突破しました。1~9月の内訳みると、トップは中国の約500万人で、全体の4分の1を占めています。ただし、家電製品やブランド品などをまとめ買いする「爆買いブームは急速に衰えている」という見方が支配的です。

観光庁の調査によれば、中国人旅行者の7~9月期の1人当たり旅行支出は22万8000円で、前年同月比18.9%減となっています。支出の費目をみると、1人当たり買い物代は10万1964円で、3四半期連続で減少しています。

なぜ、爆買いは減ったのか。円高、持ち帰り製品の関税アップ、富裕層より中間所得層の訪日、リピーターの増大に伴う「モノ消費」からレジャーや体験型観光など「コト消費」への変化……。各要因の動向に一喜一憂する気持ちは分かりますが、日本に500万人の中国人難民が殺到する事態を想像してみれば、まだ深刻な問題とは言えないのではないでしょうか。

フランツ・カフカ賞を2014年に受賞し、ノーベル文学賞候補と目されている閻連科(イエン・リエンコー)氏は、東大駒場キャンパスでの講演で以下の「逆説」を指摘しました。(写真)

「経済成長がストップすれば、中国は崩壊し、大量の難民が日本に押し寄せてくるかもしれない。人々を食べさせるため成長は維持しなければならないが、そうすれば、中国の公害はますます激しくなる」と。「こうした観点からみると、周り構わず大声で話す中国人観光客の爆買いを嘲笑することはできないのではないか」とも。

爆買いを含む中国人観光客の消費に潜む中国社会の矛盾に日本も他人事では済まされないと痛感しました。「たかが爆買い、されど爆買い」といったところです。

背反する二つの概念を並べた「社会主義市場経済」の社会では、「人々の欲望は限りなく肥大化し、罪悪が蔓延し」、「低俗な土豪」を生み、「想像を超えた奇妙な事件が日々起きている」。こうした中国の暗部をどう理解すべきなのか。この作家の見るところでは、問題は、中国人自身も含め世界中の誰も分からないことにあります。

杉本 宏(すぎもと・ひろし)
朝日新聞社教育総合本部 シニアスタッフ
1984年に朝日新聞社に入社。政治部、外報部記者を経て、ロサンゼルス支局長、アトランタ支局長、ワシントン総局員などを務める。五輪やW杯、ハリウッドの動向からロサンゼルス暴動、9・11同時多発テロ、米ロ首脳会談など、国際問題を幅広く取材した。共著に「アメリカ解体全書」(KKKベストセラーズ)。昭和女子大現代ビジネス研究所の研究員も兼ねる。