意外と似ている日本とアフリカ?
首相の任期延長ニュースで

<写真>=エチオピアの首都アディス・アババの町の様子。アフリカは独裁政権で知られる国が多い。エチオピアもそのうちの1つだ。(©Kiyori Ueno)

連載:世界は広く、おもしろい!

 アフリカは独裁政権が多い大陸として知られる。一方日本は「民主主義」により政治が行われているとされている。その日本の皆さんには信じがたいことかも知れないが、アフリカで様々なことを観察していると、日本はアフリカと似ていると思うことが少なからずある。
 最近そう感じたのは「安倍首相任期延長」のニュースだった。日本発の報道によると、自民党総裁でもある安倍首相が2018年の総裁選に3選を目指して立候補できることになった、という。党・政治制度改革実行本部が10月下旬の役員会で、現行の連続2期6年からの総裁任期延長を決めたのだという。実行本部役員会は連続3期9年とする案を軸に、無期限とする案も含めた最終判断を本部長の高村正彦副総裁に一任。来年3月の党大会で、3選を禁じた党則の改正により正式決定されるという。
 このニュースを聞いて私が即座に連想したのは、ジンバブエで36年以上権力を保持し続け、「世界一の独裁者」とも呼ばれている92歳のムガベ大統領をはじめ、カメルーン(在職41年)、アンゴラ(同37年)、ウガンダ(30年)など長期にわたり君臨しているアフリカの国家元首たちのことだった。
 実際、現在在職している世界の国家元首の在職期間リストを見ると、アフリカ諸国、イラン、カンボジア、カザフスタン、北朝鮮などの国々がほぼ上位40位を占めている。先進国では唯一、在職10年のメルケル・ドイツ首相が37位で40位以内にランクインしているぐらいだ。(そのメルケル首相は最近、4期目を目指して出馬すると発表した)。
 世界では国家元首の多選に制限を設けている国は多いが、アフリカ諸国、中央アジア諸国にはこのような制限がない国も多く、独裁政治がはびこる原因になっている。日本の場合、憲法では総理大臣の任期は定められていないが、大きな問題にならなかったのは事実上の総理大臣である自民党総裁の任期が制限されていたためだ。
 ここに面白いデータがある。英国エコノミスト誌の調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが出している「民主主義指数」で、日本は全167カ国のうち、23位(2015
年)だ。上位は想像の通りノルウェー、アイスランド、スウェーデンなど北欧やスイスなどの西欧諸国が占める。米国は20位、韓国は22位で日本より上だ。上位20位までは「完全な民主主義」とされるが、21位から79位までは「欠陥のある民主主義」、80位から116位までは「混合政治体制」、そしてそれ以下は「独裁政治体制」とカテゴライズされている。先述のジンバブエは141位、私の暮らすエチオピアは123位だ。
 私が日本首相任期延長のニュースで驚いたのは、任期が延長されるということだけではなかった。むしろ、連続3選を禁じる党則を変えることは事実上総裁の任期を延長することなのに、それが自民党内のみで簡単にできてしまうことに驚いたのだった。もちろん、理論上は自動的に党首=首相になる訳ではないので、「党則を変えただけ」ということになる。しかし、自民党は1955年以後、一時期を除いて政権を担い続けてきたのだから、事実上は「総裁任期の延長=首相の任期延長」なのであり、そのような重要な決定に国民が参加できる方法があってもいいのではないか。
 民主主義とは、国民が自分たちを代表する政治家を選び、自分たちに代わって政治を行ってもらうというシステムだ。けれども日本でよく聞くのは、投票は棄権しているのに、様々なことが「いつの間に決められてしまっている」と嘆く人々の声だ。日本が、いつの間に首相の任期が延長されて、世界でも長期の独裁政権になったというアフリカ型にならないためにも国民が積極的に政治に責任を持つ社会でありたい。

上野きより ジャーナリスト、フォトグラファー、元国連機関職員
信濃毎日新聞社、ブルームバーグ・ニュース東京支局などで記者として働いた後、国連世界食糧計画(WFP)のローマ本部を経て、食糧支援の現場であるエチオピア、ネパールで働く。2016年から独立。米国コロンビア大学国際関係・公共政策大学院修士課程修了。慶應義塾大学文学部卒業。東京出身。