• 世界を知る
  • 考えるニュース
  • 「新聞のない政府か、政府のない新聞かを選ぶとすると、私は後者だ」 アメリカ第3代大統領 トマス・ジェファソン

「新聞のない政府か、政府のない新聞かを選ぶとすると、私は後者だ」 アメリカ第3代大統領 トマス・ジェファソン

ビジネスに役立つ言葉たち⑫

                朝日新聞社教育コーディネーター 一色清

アメリカのトランプ大統領の話題が尽きません。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストといった有力新聞やCNNなどのテレビ局に対して、「フェイク・ニュース(偽ニュース)を流すとんでもないメディア」といった趣旨の発言をしばしばしています。そんなトランプ大統領自身が、ありもしないニュースをあったかのように発言するなど、アメリカは「ポスト・トゥルース」の時代に突入したかのような混乱ぶりです。

アメリカの憲法は、最初の条文である修正1条で「信教、言論、出版、集会の自由」がうたわれています。正しい情報が行き渡ることと権力をチェックすることが、民主的な国には不可欠だという強いメッセージが伝わってきます。

この憲法のもとになる独立宣言を起草したのが、大統領就任前のトマス・ジェファソンです。そして憲法のメッセージを分かりやすく表現したのが、有名なこの言葉です。政府と新聞と二つのうちどちらか一つしかないとすれば、という究極の選択を自ら迫るわけですが、ジェファソンは「政府より新聞」を選ぶというわけです。アメリカ合衆国憲法が起草されるのが18世紀後半で、ジェファソンが大統領に就くのが19世紀初めです。今から200年以上も前にアメリカは良質なメディアの重要性が分かっていたのです。

ただ、ジェファソンは大統領になってからは、新聞に対する不満を抱いていたそうです。「批判ばかりで、読むところは広告しかない」などと怒りをぶちまけることもよくあったそうです。頭では必要性が分かっていても、自分が批判されると、そうも言っていられないという心境になったのでしょう。

トランプ大統領が心配なのは、頭でも必要性がわかっていないのではないかという点です。自分に都合の悪いことを伝えるメディアは、「ないほうがいい」と本気で思っているように見えます。

みなさんが社会人になったとき、耳の痛いことを言ってくれる上司、友人、家族などをありがたいと思うようにしましょう。よりよい自分に成長するためには、必要なことです。聞きたくないので、「そんなのはウソだ」と反論するようになると、そのうちだれも言ってくれなくなりま。

朝日新聞社 教育コーディネーター
一色 清(いっしき・きよし)
1978年朝日新聞社入社。福島総局、成田支局、経済部記者、週刊誌「アエラ」編集部、経済部次長を経て、2000年「アエラ」編集長。beエディター、出版本部長補佐などを歴任。08年10月から11年3月までテレビ朝日「報道ステーション」コメンテーターを務めた。共著に『知の挑戦 本と新聞の大学』(集英社新書)。