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「完璧にできたと思ってて、それで落ちたなら、難しいねやっぱり、って言うしかないけど、全然ダメだったんでしょ。じゃあ、あきらめる理由はないんじゃないの」

写真は、NHK朝の連続ドラマ「ひよっこ」キャスト発表 ©AsahiSimbun

ビジネスに役立つ言葉たち⑯

朝日新聞社教育コーディネーター 一色清

乙女寮舎監の永井愛子さん  NHK朝ドラ「ひよっこ」から

毎朝、「ひよっこ」を見ています。終わってすぐに家を出て会社に向かうと、始業時間前のちょうどいい時間に着きます。朝ドラが15分繰り上がって8時始まりになったのはいつだったでしょうか。サラリーマンの立場からはNHKに感謝です。

「ひよっこ」はいい出来だと思います。コミカルでリアルでちょっと切なくて登場人物のキャラがたっていて。「あまちゃん」のテイストと似ています。

このブログを書いている5月時点は、東京の向島電気の乙女寮が舞台です。主人公のみね子が奥茨城から就職で東京に出てきて、乙女寮に住んでいるのです。同じ奥茨城から出てきた親友の時子も同室です。時子は女優になるのが夢です。ある偶然からNHKの番組のオーディションを受けることになりました。生まれて初めてのオーディションに緊張はマックス。茨城弁丸出しになってしまい、その場で「残念でした」と言われてしまいました。

寮に帰ってひどく落ち込んでいる時子に舎監の愛子さんがかけた言葉がこれです。愛子さんを演じるのは、和久井映見さん。昔と変わらぬかわいらしさです。愛子さんはちょっとおっちょこちょいなところがありますが、苦労人でとても優しい人です。「緊張して力を出せなかっただけなので、まだ可能性はある」と時子を勇気づけるのです。時子は、「そういう考え方があるのか」とハっと気づいたようで、気持ちが再び前向きになっていくのです。

愛子さんの言葉は、典型的なプラス思考です。合格点にどれくらい足りなかったのかは関係ありません。ダメだった原因が分かっていれば、伸びしろがあるので可能性はあると考えるのです。愛子さんなら、「完璧にできても不合格だった時」も励ましの言葉をかけるのではないでしょうか。「審査員の好みに合わなかっただけだから、別の審査員の時には大丈夫よ」とかなんとか。

人生はプラス思考のほうが得なのは間違いないでしょう。仕事で上司に怒られれば、「自分を育てようと叱ってくれた」と考えます。なかなか会ってくれない取引先がいると、「会ってくれた時の喜びが大きくなるぞ」と考えます。いいアイデアを提案したのに却下されたときは「もっとブラッシュアップしろと鍛えてくれている」と考えます。

プラス思考があまりに行き過ぎると困りますが、行き過ぎない範囲のプラス思考は大切です。仮にこのブログがあんまり読まれなくても、私は「GROWマガジンの読者は『ひよっこ』を見てないから」と考えることにします。

朝日新聞社 教育コーディネーター
一色 清(いっしき・きよし)
1978年朝日新聞社入社。福島総局、成田支局、経済部記者、週刊誌「アエラ」編集部、経済部次長を経て、2000年「アエラ」編集長。beエディター、出版本部長補佐などを歴任。08年10月から11年3月までテレビ朝日「報道ステーション」コメンテーターを務めた。共著に『知の挑戦 本と新聞の大学』(集英社新書)。