世界で役立つグローカル資源の発掘力(第2回)

キーは温故知新 異文化交流にヒント

自分の周りの日常空間をグローバルな視点から見詰め直し、外国人が「いいね」と思う地域資源を発掘し、世界に売り込みませんか。もちろん、ごく普通の資源を外国人の生活や感性にフィットするように2次創作し、製品化・商品化することも視野に入れています。

世界を相手にするならば、この発想が大いに役立つと前回のコラムで指摘しました。「日本人アイデンティティー」を捨てない限り、海外で働いていても「日本」と無縁ではいられません。世界における日本の立ち位置を常に考えざるを得ないのです。となると、いま風に言えば、「クールジャパン」の発想力を身につけておく方が得策です。

しかし、Cool Japanと言うと、唯我独尊の響きがあります。強みのオタク、サブカル産業に便乗して日本の伝統文化まで輸出しようとしている国策のイメージがつきまといます。そこで、「グローカル資源の発掘力」に置き換えることにします。グローカルとは、ご存じのように、”Think Globally, Act Locally”に由来する和製英語で、グローバル化とローカル化が同時進行する現象を指します。

では、その発掘力をどのように養えばよいのでしょうか。

キーの一つは、「温故知新」です。東京東部の下町、かつての江戸の中心地での取材で、伝統と現代の融合を好む大勢の外国人を目撃しました。例えば、空洞化した問屋街や工場跡地から現代アートの街へ再生しつつある馬喰町一帯。昭和レトロなビルの中にある前衛的な空間には、外国人の美術愛好家が絶えません。

江戸風鈴や扇子、つりしのぶ、江戸小紋など下町の伝統工芸品をフランス人の生活に合うようにデザインしようと、パリ国立美術大の学生約40人が江戸川区の職人の指導を受けたことがあります。彼らのアイデアの一つは、チークカラーやシャドーなどが入ったメークパレット付きの鏡面扇子。電車内など公共の場で抵抗なく化粧をする女性が増えています。扇子は涼をとる道具としてよりも顔や化粧品のにおいを隠すために利用し、そこに鏡を付ければ便利だと考えたそうです。

日本のユニークな経営手法を学ぼうと、インドのビジネススクールの学生約20人がキラキラ橘商店街(東京都墨田区京島)を視察したときは、葬儀店が通りに面してあることに「まさに地域密着型の消費者重視の経営だ」と驚きの声が上がりました。

アップル社を起業した故スティーブン・ジョブスが、明治から昭和にかけて制作された新版画のコレクターだったことは知られています。かつて、マッキントッシュの発表会でコンピューターの画面に新版画を登場させ、描画性能の高さを誇示したことがあります。このため、シンプルさを求める日本の新版画が画像の精細度にこだわるマックの工業デザイに影響を与えたとみる説もうなずけます。

安価、体験型娯楽性などキーは他にもあります。労働者の街・山谷(東京都台東、荒川両区)の年末と夏は、漫画同人誌の即売会「コミックマーケット」目当ての外国人オタクで簡易宿泊所がにぎわいます。観光スポット調査で、外国人観光客が金閣寺など歴史的建造物より築地市場やポケモンセンタートウキョー(港区)を好むという意外な結果が出たこともあります。

いずれにしても、考え方も感性も異なる外国人との接触を大事にしましょう。普段では気がつかない創造のヒントが生まれるかもしれないと肝に銘じましょう。

杉本 宏(すぎもと・ひろし)
朝日新聞社教育総合本部 シニアスタッフ
1984年に朝日新聞社に入社。政治部、外報部記者を経て、ロサンゼルス支局長、アトランタ支局長、ワシントン総局員などを務める。五輪やW杯、ハリウッドの動向からロサンゼルス暴動、9・11同時多発テロ、米ロ首脳会談など、国際問題を幅広く取材した。共著に「アメリカ解体全書」(KKKベストセラーズ)。昭和女子大現代ビジネス研究所の研究員も兼ねる。