世界中で起きているテロ/対テロ戦争の本質は、目に見えない「影の戦争」/9・11同時多発テロに思う

世界を震撼させた2001年9月11日の対米同時多発テロから15年が経ちます。このテロに端を発する「対テロ戦争」は世界大に広がり、人々の不安は募る一方です。今回は、9・11を振り返り、終わりの見えない対テロ戦の本質について考えてみます。世界へ羽ばたこうとしている皆さんにとっても、看過できない問題です。

9・11の朝、オサマ・ビンラーディン率いるイスラム過激派組織「アルカイダ」のメンバー計19人が4班に分かれて、ボストンやニュアーク発の米旅客機4機をハイジャックし、ニューヨークの超高層ビルやワシントンの国防総省などにほぼ同時に突っ込み、3000人近くが犠牲になりました。その中には、日本人も含まれています。

当時、ワシントン特派員を務めていた筆者は、ワシントン郊外に住んでいました。あの日の朝は、快晴で空も空気も澄み切っていたのを覚えています。まさか悪夢が待ち受けているとは夢にも思いませんでした。自宅から自家用車を運転しホワイトハウス近くの新聞社の総局に通う途中、国防総省から黒煙が噴き上げているのを目撃しました。何者かに背中を銃で狙われているような恐怖にとらわれました。

振り返ってみると、この感覚が対テロ戦争の本質を物語っているような気がします。というのも、米国対テロ集団の「影の戦争」がポスト9・11の世界で密かに進行し始めたからです。米軍がアフガニスタンやイラク、シリアでドンパチやっている裏で、CIAの秘密工作班がテロリストを闇の中で一人ひとり殺害する「標的殺害」(targeted killing)を多用しています。

テロリストとCIAの工作員を「忍者」とすれば、世界中いたる所で忍者同士が国境を股にかけて隠密行動を行い、先手必勝をモットーに「先制攻撃」を繰り返す――そんな「仁義なき戦い」が影の戦争ではないか。そのとき気づかなかったが、振り返ってみると、平穏な自分の周りの日常で「忍者」同士の暗闘が繰り広げられていた、という映画まがいの話も現実味を帯びてきました。
                        (つづく)

杉本 宏(すぎもと・ひろし)
朝日新聞社教育総合本部 シニアスタッフ
1984年に朝日新聞社に入社。政治部、外報部記者を経て、ロサンゼルス支局長、アトランタ支局長、ワシントン総局員などを務める。五輪やW杯、ハリウッドの動向からロサンゼルス暴動、9・11同時多発テロ、米ロ首脳会談など、国際問題を幅広く取材した。共著に「アメリカ解体全書」(KKKベストセラーズ)。昭和女子大現代ビジネス研究所の研究員も兼ねる。