「明日は明日の風が吹く」

写真は、南北戦争の再現。旗は南部軍のサザンクロス ©Asahisimbun

映画「風と共に去りぬ」の主人公スカーレット・オハラ

ビジネスに役立つ言葉たち⑱

朝日新聞社教育コーディネーター 一色清

「風と共に去りぬ」は1939年にアメリカで制作された映画です。世界的な大ヒットとなり、1940年のアカデミー賞の9部門で賞をとりました。日本では1952年に公開されました。今でも、映画の名作ランキングとなると、1位になることの多い名作中の名作です。

南北戦争直前のアメリカ南部の大農園の娘として育ったスカーレット・オハラの半生を描いています。何不自由ないお嬢様だったスカーレットですが、南北戦争をはさんで波乱万丈の人生を歩みます。失恋、離婚、娘の死、貧乏、成功など次々に起こる浮き沈みのなか、故郷のタラに戻ることを決めたラストシーンでスカーレットが言うのが、「Tomorrow is another day」です。これを日本語字幕では、「明日は明日の風が吹く」と訳しました。この言葉自体は昔から日本にあった表現のようですが、一挙に有名になったのは、この邦訳からでした。

このラストを見て誰もが感じるのは、スカーレットのたくましさです。「先行きを心配しても仕方がない。なるようになるわ」という楽天的な強さです。観客はこの言葉にほっとし、元気づけられるのです。それがこの映画の大成功の秘密かもしれません。

仕事をするうえでも、この言葉に救われることがあります。私がテレビ朝日「報道ステーション」のコメンテーターに起用されたときのことです。新聞や雑誌の記者、編集者の道を歩いていた私が、突然テレビでしゃべる仕事をすることになりました。しかも、テレビ朝日の看板番組のレギュラーです。緊張するなというのは無理な話で、最初の一週間など今でもビデオを見ることができないくらいガチガチでした。声が震えるわ、しどろもどろになるわ、言い間違えるわ。生放送が終わるたびに落ち込んでいました。そんな時、プロデューサーが励ましてくれました。「一色さん、テレビに出る人はみんな経験することです。大事なのは翌日に引きずらないことですよ。終わったことはみんな忘れてください。明日は明日ですよ」と。このとき、頭に浮かんだのがスカーレットの「明日は明日の風が吹く」でした。とても気が楽になりました。

誰でも、仕事で落ち込むことがあります。いったん落ち込むのは仕方ありません。肝心なのは、それを引きずらない気持ちの切り替えです。その方法は人それぞれでしょう。「明日は明日の風が吹く」と言ったスカーレットの姿を思い出すのもひとつの方法かもしれません。

「風と共に去りぬ」をまだ見ていない人には、DVDを借りてみるのをおすすめします。昔の映画ではよくあった休憩時間を挟む3時間52分もの大作ですが、きっと飽きずにワクワクしながらみることができると思います。そしてちょっと元気になれるかもしれません。

朝日新聞社 教育コーディネーター
一色 清(いっしき・きよし)
1978年朝日新聞社入社。福島総局、成田支局、経済部記者、週刊誌「アエラ」編集部、経済部次長を経て、2000年「アエラ」編集長。beエディター、出版本部長補佐などを歴任。08年10月から11年3月までテレビ朝日「報道ステーション」コメンテーターを務めた。共著に『知の挑戦 本と新聞の大学』(集英社新書)。