グローバル人材を考える/日本人か地球人か/立ち位置を定めよう

 「グローバル人材」という言葉が就活市場で氾濫しています。少子高齢化で国内需要が低迷しているため、企業は海外市場に目を向けざるを得ません。この言葉が注目されるのも当然かもしれません。しかし、漫然と使われていることに違和感を覚えるのは筆者だけでしょうか。一体、グローバル人材って何?就活を乗り切るためにも、この際、世界で活躍するのに必要な能力や資質について考えてみましょう。

 国や経済界が思い描くグローバル人材像を知るうえで参考になるのが、政府の「グローバル人材育成推進会議」が2012年6月に産学連携でまとめた報告書です。それによると、グローバル人材には、まず、主体性やチャレンジ精神、協調性、柔軟性などが求められます。一言で言えば、「社会人基礎力」です。さらに、異文化理解力も必要です。もちろん、英語など語学は出来るに越したことはないです。

 ここまでは筆者も同感です。しかし、どうも釈然としないのは、「日本人としてのアイデンティティー」がグローバル人材の要素の一つに挙げられていることです。それは、日本国への帰属意識や日本人としての誇りを指すのでしょうか。郷土愛的なものですか。「和の精神」や「おもてなしの心」といった日本人らしさですか。それとも、日本文化や社会、歴史への深い造詣を意味するのでしょうか。

 いずれにしても、外国人が日本企業のトップに君臨したり、中国人やインド人の同僚、上司と机を並べたりする時代に、「日本人アイデンティティー」をどこまで重視すべきなのかという問題は熟考に値します。日本企業で一生働くとは限りません。将来、外国に永住するかもしれません。人種や宗教の多様性、人権・人道性といった普遍的な価値を優先すべきという見方も一理あります。世界で通用するには、日本人より「地球人」としての自覚が求められているのかもしれません。

 日本企業の間でも、多様性への理解や寛容性が大切だという認識は徐々に広がっているようです。経団連が昨年3月に公表した調査結果では、グローバル人材に求められる素質として、「海外との社会・文化、価値観の差に関心を持ち、柔軟に対応する姿勢」を選んだ企業が7割以上を占めています。

 では、世界で羽ばたくためには、日本人であることと地球人であることの釣り合いをどのようにとるべきなのでしょうか。自分の立ち位置を決めるにあたり、次の二つのことを実践してみて下さい。

 まず、世界の大きな時流を見通す力を磨きましょう。米情報機関のシンクタンクといわれる「国家情報会議」の「Global Trends 2030 Alternative Worlds」(2012年12月版)に目を通すことをお勧めします。15~20年先まで世界の大潮流を予測しています。その要旨だけは、海上自衛隊幹部学校のサイトに邦訳が掲載されていますが、全訳書『2030年 世界はこう変わる』(講談社)もあります。

 もう一つは、「グローカル資源の発掘力」を養うことです。外国人は日本のどこに「いいね」と思うのか。クールジャパンの乗りで考えてみましょう。逆に、身近な地域資源を外国人に受けるようにデザインする発想も役立ちます。

杉本 宏(すぎもと・ひろし)
朝日新聞社教育総合本部 シニアスタッフ
1984年に朝日新聞社に入社。政治部、外報部記者を経て、ロサンゼルス支局長、アトランタ支局長、ワシントン総局員などを務める。五輪やW杯、ハリウッドの動向からロサンゼルス暴動、9・11同時多発テロ、米ロ首脳会談など、国際問題を幅広く取材した。