これから増える国際バカロレアを持っている大学生!

これからの時代、唯一絶対の正解などない世界の諸問題を解決していくためには、知識の丸暗記では太刀打ちできないことや、既存の知識や事実と思われていること自体を疑い、一人ひとりが自分の頭でしっかり考えることの大切さを、これまでの連載の中で述べてきました。

そのような姿勢、態度を育むうえで大変有効と思われる教育アプローチの一つとして、今回はスイス生まれの教育プログラム、「国際バカロレア(IB)」を紹介したいと思います。日ごろから新聞をよく読んでいる人であれば、昨今取り上げられることが増えているので聞いたことがあると思いますが、文部科学省は今、IBの普及に力を注いでおり、2018年度までに国内のIB認定校(2015年10月1日現在36校)を200校に増やす計画を推進中です。また、大学入試に「IB入試」を取り入れる大学が増えていることも、しばしばニュースになっています。

このようにIBが今注目を浴びる理由は、IBがグローバル人材に不可欠な哲学的思考法のエッセンスを磨く教育プログラムだからです。IBが掲げる理想の「学習者像」は次の10項目です。

1. 探究する人(Inquirers)
2. 知識のある人(Knowledgeable)
3. 考える人(Thinkers)
4. コミュニケーションができる人(Communicators)
5. 信念をもつ人(Principled)
6. 心を開く人(Open-minded)
7. 思いやりのある人(Caring)
8. 挑戦する人(Risk-takers)
9. バランスのとれた人(Balanced)
10. 振り返りができる人(Reflective)

いずれも、学生のみならず、ビジネスパーソンにも必要なエッセンスと言えます。しっかりした知識をもったうえで、その知識すら果たして本当だろうかと疑ってかかる探究心や考える姿勢、バランス感覚など、哲学的思考法の基盤となる要素が、IBの10の学習者像には見事に反映されています。

また、クリティカル・シンキング(批判的思考法)という言葉も、最近目にしたり耳にしたりする機会が増えているのではないかと思いますが、これも哲学的思考法を実践するうえでとても大切なアプローチです。クリティカル・シンキングに必要なのは、「前提を疑ってみること」「自分なりの解釈をして考えを持つこと」「自分なりの考えを主張すること」の3要素です。IBの10の学習者像にも相通じます。

皆さんに身近な例として教科書の例を一つ挙げます。社会の教科書に載っていた戦国の武将・織田信長の肖像画をだれでも一度は見たことがあると思います、何の疑いもなく頭に浮かぶあの肖像画は、なぜ織田信長だと言えるのでしょうか。教科書に載っているものは100%正しいのか。まず、そんなところから疑ってみましょう。あなたが知識として知っていると思っていることは、本当に真実なのか。それが真実だというのであれば、なぜそう言えるのか。論理的に正しいと言えるまで、掘り下げて考えていくのです。知識とは、このようなクリティカル・シンキングによって、初めて教養へと発展していきます。

IBの学習者像の最後に挙げられている「振り返りができる人」もとても重要です。自分のさまざまな経験を振り返り、反省をしたり、もっとうまくできたのではないかと考えたり、あるいはうまくいったのなら、なぜうまくいったのかを振り返るのです。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という、江戸時代の大名で剣術の達人でもあった松浦静山の言葉があります。失敗を振り返り、失敗に学ぶことで、次につなげることの大切さを示す箴言(しんげん)です。人は間違いを犯す動物です。自分も間違うし、他人も間違う。世界のエリートは、そのことを大前提として認識しています。自分の知識は、あくまでもたくさんある考え方の一つに過ぎないということを前提として、自分の考え方を深めたり、新しい考えをつくり出したりしていくのです。