海外大への直接入学・留学を目指す中高生

(写真は、武蔵テンプルREDプログラム提供)

未来のグローバル人材を育てる課外授業/Liberal Arts & Sciencesを重視

就活をしていると、「グローバル企業」という言葉を頻繁に耳にすると思います。グローバル企業を標榜すること自体は悪いことではありません。グローバル化の波は否応なく押し寄せてきます。しかし、英語の社内公用語化、英語テストの点数重視、外国人社外取締役の割合増といった対応がもてはやされる現状をみると、日本企業の対応がその場凌ぎの対症療法に過ぎないという印象は否めません。

産業能率大学が昨年4月に新卒採用された新入社員を対象に行った調査では、「海外で働きたいとは思わない」という回答が過去最高の64%に達しました。外国人上司に抵抗感を覚える新入社員も過半数です。果たして、入社後の職場研修(on the job training)や派遣留学だけでグローバル人材の育成は間に合うのでしょうか。中長期を見据えた腰の座ったグローバル戦略が強く求められています。

そんな中、グローバル人材の潜在的な「供給源」として注目されるのが、武蔵中学、高校を運営する学校法人「根津育英会武蔵学園」が海外の大学への進学や留学を目ざす中高生を対象に開いている「武蔵テンプルREDプログラム」です。テンプル大学と共同開発した課外授業で、英語で考え、コミュニケートする力を鍛えています。武蔵だけでなく、他校の生徒にも門戸を開放しており、独自の奨学金制度もあります。

5月末に東京・千代田区のRED九段下教室を覗くと、中3の男女生徒計10人がタブレット端末を使って、動物の分類や宇宙探査などについて調べていました。テンプル大学日本校のマット・ウィルソン講師の問いかけに英語で一生懸命に答え、ワークシートに英語で真剣に書き込む姿を見て、大いに頼もしく思いました。

留学したその日から、英語で意見を述べ、ディスカッションに参加できる、そんな力が身につく授業を目指しています。「世界共通の知の体系」である科学を題材に、英語でリサーチ(R)し、エッセー(E)を書き、ディベート(D)する力の体得を重視しています。まさに、グローバル人材に必要な「基礎力」だと思います。天体観測や牧場体験など体験学習を重視するサマープログラムもあります。

植村泰佳理事は、「英語ができても、海外の大学では、授業についていけないことがあります。自分で深く考える力、問いを立てる力が何より求められます。そんな英語圏の授業スタイルも学び、世界へ積極的に飛び出していく若者が増えて欲しいです」と話しています。

かつて大手企業で働いた経験のある植村氏は、こう懸念しています。「日本企業の社員は、問題を見つけるのが下手です。決められた枠内で最適解を出そうとする優等生は多いです。しかし、システムそのものを改革することに意欲的な人はあまり見かけません。このままだと、Japan passingが現実になりかねません」と。

ここの生徒たちより一足早く世界へ飛び立とうとしているみなさん!自分の「RED力」を点検してみてください。仮に思うような結果が出なくても、英語力だけのせいにはしないでください。まずは、教養のつけ方に問題がなかったか疑ってみましょう。
(杉本 宏)

杉本 宏(すぎもと・ひろし)
朝日新聞社教育総合本部 シニアスタッフ
1984年に朝日新聞社に入社。政治部、外報部記者を経て、ロサンゼルス支局長、アトランタ支局長、ワシントン総局員などを務める。五輪やW杯、ハリウッドの動向からロサンゼルス暴動、9・11同時多発テロ、米ロ首脳会談など、国際問題を幅広く取材した。共著に「アメリカ解体全書」(KKKベストセラーズ)。昭和女子大現代ビジネス研究所の研究員も兼ねる。